i'm a teapot

世界のおもしろいこと こっそり広げる

ルールは変化する

あなたが好もうが好むまいが技術は進歩するし、世界のルールは変わる。

私たちが選べるのは変化を「怖れる」か「楽しむ」か、そのスタンスだけだ。

 

「今のルール」がもっとも変わりそうな分野はips細胞を中心とした再生医学。そして、もうひとつがロボット工学だ。

これまでも「これからはロボットの時代だ」「日本はロボット技術で世界をリードしている!」と散々言われながら爆発的な普及は見られなかった。その原因は技術力の不足ではない。

最大の原因は「リスク意識」と「過剰な責任」にある

それを象徴するケースを元パナソニックの技術者・本田幸夫さんが教えてくれた。

 

ルンバのようなお掃除ロボットは実は日本でも開発されていました。

パナソニックでも1990年代に開発していたのですが、商品化できませんでした。

その理由の一つは絶対安心を保証できないから。

「おばあちゃんが仏壇にお参りをして火の付いたローソクを畳の上において、そのまま忘れてしまい、お掃除ロボットが掃除をしているときに火のついたロウソクを絶対に倒さないか?もし火事が起きた時に誰が責任を追うのや?

と、商品開発部門から指摘されて商品化できなかった。

(本田幸夫『ロボット革命』

ロボット革命 なぜグーグルとアマゾンが投資するのか(祥伝社新書)

 

国内で「リスクが大きい」「責任はだれがとる」という議論をしているうちに、気づけば世界中で動き出している。Amazonは商品配達の全自動化を目指し「ドローン」と呼ばれる飛行型ロボットでの飛行試験を始めようとしているし、Googleは8社のロボットベンチャーを相次いで買収、情報世界からリアルワールドへ触手を伸ばそうとしている。

Googleに買収された企業の中には、東京大学発のベンチャー企業も含まれている。「誇らしい」ことに、この企業は「DARPAチャレンジ」というロボットの技術の大会で、圧倒的な性能を示し世界を驚嘆させた技術力を持つ企業だった。Googleに買収されてからは、この技術がどうなっているのか、まったく動向をつかむことはできなくなった。

 

リスクを取らないことによる最大のリスクは「ディファクトスタンダード」。すなはち、市場における標準規格を海外の企業に握られることだ。たとえば、ドローンによる自動配達ロボットをいざ日本でも導入しようとしたときに、Amazonにディファクトスタンダードを取られていたらどうなるか。電線の多い日本でも対応できるように仕様に変更してもらう必要があるかもしれない、そうなると莫大な金額を請求される可能性があるし、日本企業が海外のロボット企業の下請けになる可能性もある。

 

技術的特異点といわれる2045年には、今あるほとんどの単純労働がロボットにとって代わるといわれている。でも、それって悪いことなのだろうか?

現代に限らず、100年前に行われていた仕事だってそのほとんどが無くなり機械により自動化されているではないか。「きつい仕事」「つまらない仕事」を避ける為に、人間はかつて奴隷を使ってきたし、今ではロボットを開発している。そうやって捻出した時間を人間は「人間にしかできない仕事」「新しい仕事を生み出すための仕事」に費やすことができる。

ロボットの台頭は、人間自身が「人間にしか出来ない仕事とは何か」考えるためのまたとない機会となるのではないか。