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そろそろ“カン”で教育政策を決めるのやめませんか?/『「学力」の経済学』

これまで教育の政策を評価する基準がなかった。

たとえば、
「ゲームは悪影響?」「ご褒美でつるのは悪?」「35人クラスの方がいい?」etc・・・
議論されるものの、これまでは“教師のカン”で決まってきた。

 そういう現状にメスを入れ、「教育にエビデンス(=科学的な根拠)をいれませんか?」と提案しているのが本書。 

「学力」の経済学

「学力」の経済学

 

 この本には、「なんとなくこうじゃね?」と議論されがちな、教育をめぐるアレコレに対して、著者が古今東西からデータを集め、一つずつ“客観的な”事実を提示していく。

・テストでいい点を取ったらご褒美 VS 読書をしたらご褒美
 → 読書の勝ち。アウトプットよりもインプットを褒めるべき
・自尊心が高いと学力は高いか?
 →根拠なし。
 「学力が高いと自尊心が高い」は正しい。(原因と結果が倒置)
・褒め方。「頭がいいね」VS「頑張ったね」
 →「頑張ったね」の勝ち。能力を褒めると努力を怠る。
・テレビゲームをやめさせると成績あがる?
 →上がらない。
 1時間ゲームをやめさせても、勉強時間は平均1.8分(男子)しか増えない。

■クラスからの影響について

・平均的に学力が高い集団にいると、自分の学力にはプラス。
・ただし、優等生からプラスの影響を受けるのは上位層だけ
・問題児がいると、顕著に悪影響
 1人問題児がいると、他の子が問題行動起こす確率は17%アップ
・成績別にクラスを分けると、全体の学力を上げる。特に成績下位ほど効果大
※ただし、幼いときに習熟度別クラスに分けることは、平均学力を下げ、格差を拡大。

・いつ教育に投資すべきか。
 →投資を収益率で見たとき、子供が幼いほどに効率がいい。

・少人数学級はいいか?
 → 無駄ではないが、費用対効果が低い。

・では、費用対効果が高い対策とは?
 → 習熟度別の方が効果高い。

もっと費用対効果がよい施策は、
「“学歴と年収のデータ”の関係について教える」だけ、というものだった。
曰く、「高卒と大卒で生涯で稼ぎが1億円ちがう」という事実を子供がしるだけで、どんな政策よりも子どもの偏差値は効率的に上昇する。

 ちなみに「こども手当」も費用対効果低い。
 なぜか日本では、「費用対効果効果が低い」という結論が出ているものに限って、選択される。

 

・学校別順位は公表すべきか?
 → 順位だけでは意味なし。学校が“よい教育”を行っている証拠とは言えない。
  たんに、“教育に関心が高い”家庭が通っている可能性も。

・教員免許は教員の質を担保するか?
 → ほとんど意味なし。免許の有無での教員の質の差は少ない。
  それよりも免許のある教員同士の差の方がはるかに大きい!

 もちろん、海外のデータが絶対正しいとは著者は言っていない。
日本の事情がある。でも、

 それもこれもデータがないことには議論できないよね!

というのが著者の主張。現状は日本国内ではデータ不足&データへのアクセス困難。「誰が誰を教え、その後どうなったか」が紐づけられない。文科省による全国学力・学習状況調査はオープンにされておらず、学術研究に使えない。調査に50億円(!)も使われているにも関わらず。

 まず、そこから始めましょうということ。